洋上風力発電への期待と課題

(lamplightfilm様,PhotoAC)
今回は洋上風力発電への期待と今後の課題について見ていく。洋上風力発電は、海上に風車を設置し発電する再生可能エネルギーに分類される発電施設だ。着床式(海底に基礎を直接固定)と浮体式(浮体した構造物の上に風車を設置)の二種類がある。
洋上風力発電のメリット・デメリット
メリットは大きく分けて3つある。1つ目は陸上の風力発電と比べて洋上は安定した発電を実現しやすい点がある。海上は風が安定して強く吹く傾向にあるためだ。2つ目は大型の風車を導入しやすい点だ。洋上は広く、かつ周辺への騒音や景観への配慮にそこまで気を使わなくて良い利点がある。3つ目は騒音や景観問題になりづらい点だ。陸上とは違い、市街地から離れた所で発電できるため、そうした問題を防ぐことに繋がる。また、再生可能エネルギーは温室効果ガスを排出せず、石油などの原材料も不要な点で環境保護や安全保障上の利点もある。
デメリットは建設費の高騰と維持コストが依然高い点だ。海上での工事や塩害による劣化への対処、及びメンテナンスの際も船舶が必要になるためコストがかかってしまう。また、漁業などへ悪影響を及ぼさないよう配慮が必要だ。現時点では設置技術などもまだ発展途上であり、今後こうしたコスト面での問題をクリア出来るか否かが成功のカギを握る。
今後の見通し
日本は四方を海に囲まれており、洋上風力発電のポテンシャルは高いと見られている。日本は2050年にカーボンニュートラルを実現するため温室効果ガスを削減する取り組みを加速させる必要があるため、その切り札になり得る。
しかし、2025年8月22日に建設費高騰で三菱商事と中部電力を中心とした企業連合が進める洋上風力発電事業(秋田県や千葉県の計3海域を予定)を巡り、主要工事を請け負う予定だった鹿島建設が事業から離脱した。建設費の増加分の負担を巡る調整で折り合えなかった事が原因とされる。その後、同月27日に三菱商事から当事業の開発自体を中止する旨の発表が出され、世界的なインフレや円安傾向によって採算性の悪化がより深刻になっている。一方、北九州市では「北九州響灘洋上ウインドファーム」が2025年度中の運転開始を見込み、風車25基で最大出力22万キロワットの発電量を予定する。これは稼働時点で国内最大の洋上風力発電となる。
設置に際して大きなコストがかかる点が課題とされるが、カーボンニュートラル実現に向け洋上風力発電への期待も大きい。今後の動きに注目だ。
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