あぶくま型護衛艦がフィリピンへ その狙いとは

護衛艦 ちくま(PhotoAC,短毛丸様)

 2025年7月に入り、海上自衛隊より退役が予定されるあぶくま型護衛艦が、フィリピンへ輸出される見通しだと報道された。「輸出」と表現したが、厳密にはフィリピンとの共同開発という形となる。これはフィリピン側の事情に合わせた改修の必要性や、防衛装備移転三原則においては殺傷能力の高い護衛艦をそのまま輸出するのは禁止されているためとされる。

 あぶくま型護衛艦は沿岸防衛を目的に1988年から生産が開始された護衛艦だ。沿岸防衛用とは言え武装はそれなりにあり、ハープーンやアスロックといった対船・対潜装備も備えている。

 今回あぶくま型護衛艦をフィリピンへ輸出する背景には、中国の海洋進出がある。特にフィリピンは南シナ海において中国と領土問題を抱えており、中国の巡視船との衝突も発生している。急速に拡張している中国海軍・海警局に比べるとフィリピンの海軍力は劣ると言わざるを得ない。そのため日本はフィリピンへ巡視船や各種装備及びノウハウを伝授し、フィリピンの海上警備能力の向上に努めてきた。今回のあぶくま型護衛艦輸出もその一環として行われる。あぶくま型は旧式とは言え世界水準で見ればまだ戦える部類には入り、共同開発が必要な点はあるものの早期に海軍力を増強できる利点もある。

 日本としてもフィリピンの海上警備能力を向上させれば、間接的に南シナ海の安定に繋がる他、フィリピンとの防衛協力で新たなビジネスチャンスが生まれる事も期待出来る。2020年にフィリピンへ日本製の警戒監視レーダーの輸出が決定したが、これは防衛装備移転三原則下で初の完成品移転となった。今後も日比の協力は深化していくだろう。

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